個人的に関心のあるIoT/AI技術をRaspberry Piなどのプラットフォームをベースにハードウェア、ソフトウェアのプロトタイプ開発、実証評価を行うDIYプロジェクトです。アプリケーションのテーマは、日常生活の課題解決を目的にトライしてみようと思っています。
DoCoiruのコンセプト
- 子供が小学生になって行動範囲も広がったので、安全に外で遊べて、親も安心して遠隔管理できる子供の見守りシステムをDIYで作ってみようというのがキッカケです。
- 子供の位置情報を把握できるソリューション「DoCoiru ドコイル」です。
- 端末の通信料ゼロ、校区内エリア(自宅から半径1.5km圏内)をカバー、子供の位置管理だけでなく音声で子供に注意喚起できるプラットフォームです。
システム概要
- Edgeデバイス、Gatewayデバイス、クラウド、スマホアプリにより構成されるIoTプラットフォーム。
- Edgeデバイスは子供のポケットに収まるスモールサイズ。
- GPSで子供の位置を検出してクラウドに送信。子供がエリア外に出そうな場合は音声アラートにより子供に注意喚起。
- Gatewayデバイスは、Edgeデバイスから受信したデータを解析してクラウドに蓄積します。半径1.5kmの広い通信エリアをカバー(環境に依存)
- 子供の位置情報を見える化してスマートフォンで子供の位置を確認、LINE経由でアラート通知、子供に送ったテキストを音声で読み上げて注意喚起。
開発環境
Edgeデバイス、GatewayデバイスともにRaspberry Piをベースで環境構築しました。部材費は1セット合計で3.5万円程度と比較的安価におさまりました。
Edgeデバイスの構成
Main board | Raspberry Pi ZeroW CPU:BCM2835@1GHz RAM:512MB ROM:16GB@SD card Class10 |
RF module | Interplan IM920@TX power 10mW |
GPS module | Ublox GY-NEO6MV2 |
Audio module | MAX98357A(I2S-3W D級アンプ基板) |
Battery | 2000mAh Li battery |
OS | Raspbian OS lite |
Gatewayデバイス
Main board | Raspberry Pi3 BCM2837B0@1.4GHz (4cores) RAM:1GB ROM:16GB@SD card Class10 |
RF module | Interplan IM920XS@TX power 10mW |
OS | Raspbian OS |
技術のポイント
長距離通信可能なLPWAを利用
- 障害物に強く長距離通信可能な920MHz帯の免許不要の無線通信規格を利用。
- 見通通信距離1.5km程度。Bluetoothの約150倍の通信距離を見込める。
- 超低消費電力(電池駆動可)
軽量なテキスト音声合成を利用
- LPWA無線通信の欠点は通信帯域(実測レート:10kbps未満)が狭くデータ量の大きな音声データをリアルタイム送信できない。
- データ量の小さなテキストデータ(64文字@128byte)であればLPWA無線通信でリアルタイム送信が可能。
- テキスト音声合成ライブラリを活用することでテキストから音声に変換して注意喚起を実現。
実証実験
LPWA無線通信は理論値として数kmの通信エリアは総受信可能とありますが、実環境でどの程度実用的に使えるのかは分かりません。と、いうことで実際実証評価してみようと思います。
持ち運び可能な受信機と、送信機を設置してP2Pで電波強度(RSSI)と通信距離を測定しました。
実験場所は、見通しの良いフィールドと住宅地のフィールドの2パターンで評価実験を行いました。
見通しの良いフィールドでの実験結果
- 比較的見通しの良い直線距離においては、1.4km地点でも安定して受信を確認。
- 1.5km以上および建物の陰に入ると受信が不安定。
- この通信モジュールの通信可能距離は見通し1.4kmまでが限界と判断。
住宅地フィールドでの実験結果
- 住宅密集地で障害物が多いため、想定以上に電波減衰が酷くて通信エリアが限定的な結果に。
- 特に送信機を設置した窓と逆側の方向に対しては、安定して受信できない。
- 総じて見通しの良いフィールドと比べると1/10程度の通信エリア。
課題に対する対策案
住宅地での通信距離問題の対策案
Gatewayデバイス(基地局)の設置位置を固定すると、障害物の多い住宅地では電波減衰が酷いので通信エリアが限定的(1/10以下)になることが実験結果により判明しました。
それを解決する案の1つとして、LPWA中継器を新たに用意することで、通信エリアを拡大して子供の位置探索を行いやすくなると考えました。
具体的には、保護者が超小型のLPWA中継器(フリスクサイズ)をポケットやカバンに入れて持ち運ぶことで、Gatewayデバイス(基地局)の通信エリアでは検出できなかった子供の位置把握が出きるようになると考えます。
片方向コミュニケーション問題の対策案
現状のシステムでは、テキスト音声合成ライブラリを活用することで保護者から子供に音声によると注意喚起は出来ますが、逆に子供から保護者に応答する仕様ではありませんでした。
子供の位置は把握できても、具体的な子供の状況をリアルタイムに知る術がありませんでした。
そこで子供が所持するEdgeデバイスに小型マイク+音声認識ライブラリを更に搭載することで、保護者と子供の双方向音声コミュニケーションを実現して、より使い勝手の良いシステムになると考えています。
※音声認識の精度検証は必要。
多少の改造とソフトウェアライブラリーの導入なので難度は高くはないのですが、実装する時間が取れるかが、、、😥