6.ベンチャーキャピタルの投資検討プロセス

投資検討プロセスを理解して準備が必要

ベンチャーキャピタルによって細かなプロセスは異なると思いますが、一般的な投資検討プロセスを紹介します。
なお、審査期間はベンチャーキャピタルによってまちまちですが、Nalaが務めるベンチャーキャピタルの場合は、エントリーから投資実行(振込)まで3~4ヵ月が一般的です。

初回アプローチ
起業家とベンチャーキャピタリストの初回面談です。
キャピタリストは、会社・事業・製品/サービスの概要や事業計画のサマリーなどを確認します。とにかく、短時間で要点を絞って説明できるように心掛けた方が良いと思います。熱意を持って長時間説明される経営者もいますが、あまりにも話が長いのはマイナスです。
サマリー資料についてはこちらの記事をご覧ください。
必要資料の提出
ベンチャーキャピタリストが関心を持てば、投資検討に向けて必要資料の提供を求めます。
必要資料のリストや投資条件については、こちらの記事をご覧ください。
エントリー審議会
正式にデューデリジェンスのリソースをかける案件かどうか審査する会議です。この時点でキャピタリストは「肌感的」には、今後リソースをかけてデューデリジェンスに進みたいとは思ってます。ただし、その先に進められるかは、社内のエントリー審議会で意思決定されます。
デューデリジェンス
デューデリジェンス(D/D)は、意志決定に向けての判断材料の収集、調査を行うことを言います。
デューデリジェンスには様々な調査項目があります。 代表的な3つを紹介します。
技術/知財デューデリジェンスでは、技術の確からしさ、競合優位性の確認、知財の新規性、進歩性、競合の参入障壁の調査を行います。
事業デューデリジェンスでは、ターゲット市場規模、市場ニーズなどのマーケティングや、事業計画の蓋然性を確認する為にビジネスモデル、営業戦略、顧客獲得状況などを確認して、将来的に事業計画の実現可能性と成長性を確認します。
なお、実際にそのベンチャーの取引先、協業先などにもヒアリングに行って、ベンチャー側の証言が正しいかどうかの確認や、ベンチャーが提供するサービスの課題、改善点などの確認も行います。
財務デューデリジェンスでは、財務三表(PL、BS、CF)を確認して、事業推移や資金繰りに無理がないか、借入金など資産の確認まで行い投資検討に際して問題ないかを確認します。
その上で、そのベンチャーの価値評価(バリュエーション)を算定します。バリュエーションについては別途詳細に説明しようと思います。
案件審議会(複数回)
ベンチャーキャピタルによって、社内審議会のチェックポイントは異なりますが、Nalaが勤めるベンチャーギャピタルでは、計3回の審議会があります。
第1審議会では、技術、競合優位性、知財などについて審議します。
第2審議会では、事業性、市場性、投資の採算性などについて審議します。
第3審議会は、最終の投資委員会に向けて全体のロジック整理を行います。
各審議会で厳しい審査を行いますので、途中で投資を行わない案件も出てきます。
投資委員会
Nalaが務めるベンチャーキャピタルでは、外部の審査委員に対してキャピタリストが事業性、技術性、市場性、投資の採算性など全体を説明して、投資に対する意志決定を行います。
投資契約書
投資委員会で投資の承認が得られれば、具体的な投資条件を取り決めて投資契約書を結びます。なお、ハンズオンで社外取締役を派遣する場合は、その手続きも並行して進めます。
投資実行(振込)
指定された振込期日に出資を行います。これがゴールではなく、ここから急成長に向けての事業加速がスタートします。
ハンズオン
ベンチャーの成長を支援するために、キャピタリストによるハンズオン支援を行っていきます。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
EXIT
上場、もしくはM&Aにより、ベンチャーギャピタルにとっては、はじめてのアウトプット(利益)を得られます。
EXITまでは、短くても数年は掛かるので、ベンチャーとキャピタリストは二人三脚でやっていくことになります。

ベンチャーキャピタルの投資検討プロセスの流れをご理解頂けましたでしょうか。

次回以降は、より踏み込んでベンチャー側で検討・準備が必要となる、マーケティング、事業計画、資本政策、資金繰り対策などについて個別にまとめていきたいと思っています。

投稿者プロフィール

nalab
nalab
管理人:NaLa
元エンジニア
ベンチャーキャピタリスト
うどん県出身/関西在住