3.ベンチャーキャピタルの種類と特性

ベンチャーキャピタルの投資方針と
支援内容を理解することが重要

今回はベンチャーキャピタルの代表的な分類についてご紹介します。
出資額や支援内容が異なりますので、それぞれの特性を理解することで最適なベンチャーキャピタルを選ぶことをおすすめします。

  • 政府系ベンチャーキャピタル(官民ファンド)
  • 銀行系ベンチャーキャピタル
  • 証券会社系ベンチャーキャピタル
  • 保険系ベンチャーキャピタル
  • 独立系ベンチャーキャピタル
  • 事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)

政府系ベンチャーキャピタル(官民ファンド)

国の政策に基づいて政府と民間が共同で出資する政府系ファンドになります。
国と民間が特定の目的のために資金を出し合って基金を作り、出資、融資を行って、その配当や収益を分配する機関です。政府の緊急経済対策として期限付きで創設されることが多く、産業革新機構、国立大学系ベンチャーキャピタルの官民イノベーションプログラムなどが該当します。

投資区分として原則会社設立後7年以上の企業に投資する「一般投資」と、7年以内の企業に投資をする「創業期投資」の大きく2つに分かれます。
しかし、投資を行う企業の業種やステージは制限を設けていない場合が多く、成長が見込まれる分野、業種への投資を行っており、投資先企業は多様なのが特徴です。特に国立大学系ベンチャーキャピタルは、投資部にその分野の技術領域に精通した人材を備えている場合が多いです。

ファンド所轄ファンド規模
株式会社民間資金等活用事業推進機構内閣府約94億円
国立大学法人評価委員会官民イノベーションプログラム
文部科学省1000憶円
クール・ジャパン機構経済産業省600億円
Re-Seed機構国土交通省
環境省
日本政策投資銀行競争力強化ファンド(DBJ)財務省最大3,150億円
株式会社産業革新機構(INCJ)経済産業省最大約2兆円
独立行政法人中小企業基盤整備機構経済産業省5,191億円
株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)内閣府約1兆2,000億円
株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)農林水産省318億円
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JiCT)総務省

銀行系ベンチャーキャピタル

メインバンクの多くはベンチャーキャピタルや投資部門を持っています。銀行グループとの連携により、顧客ネットワークが広いことが特徴です。
ただし、銀行からの出向者も多い為、融資に近い傾向があるので、投資評価に関しては成長性よりも安定感を重視する傾向があります。
なお、経営モニタリングの支援は期待できますが、一概には言えませんがハンズオンには消極的な場合が多く、事業戦略や経営陣の派遣などはあまり期待できないかも知れません。

三菱UFJキャピタル三菱UFJグループのベンチャーキャピタルです。
ライフサイエンスや製造業への投資が多く、アーリーからミドルステージが中心です。シードステージのベンチャーに対してアクセラレーションプログラムを実施しており、創業期の支援にも力を入れています。
SMBCベンチャーキャピタル三井住友ファイナンシャルグループのベンチャーキャピタルです。
主にはIT、サービス業のアーリーからミドルを中心に幅広いステージのベンチャーに投資をしているのが特徴です。
みずほキャピタルみずほファイナンシャルグループのベンチャーキャピタルです。
国内企業のIT系のベンチャーを中心にアーリーステージ以降への投資を行っているのが特徴です。

証券会社系ベンチャーキャピタル

証券会社の参加にあるベンチャーキャピタルです。証券会社からの出向者が多いのも特徴です。
投資スタイルは創業間もないアーリーステージでの投資にも比較的積極的で、投資対象分野は特に限定されていない場合が多いのが特徴です。
証券系ベンチャーキャピタルは系列企業が投資先の主幹事証券となる場合も多いのも特徴の1つです。

ジャフコ元々、野村證券グループの日本では最も歴史の古いベンチャーキャピタル。
2017年に野村グループがジャフコの株を売却。現在は独立系ベンチャーキャピタル。
日本だけでなく海外企業にも投資をしており投資件数は約4000件ともいわれている。
大和企業投資大和証券グループのベンチャーキャピタル。
日本だけでなくアジアを中心にも投資をしている。IT、ライフサイエンス関連の投資が多いのが特徴。

保険系ベンチャーキャピタル

保険系ベンチャーキャピタルは、生命保険系と損害保険系の大きく2種類あります。
元々は保険料の運用の一環として投資を行っているのが特徴です。

ニッセイキャピタル日本生命の子会社のベンチャーキャピタルです。
比較的大規模なファンドを複数運用して、シードからレイターまで幅広く投資を行っているのが特徴です。シードステージを対象としたアクセラレーションプログラムも行っており、創業期の支援も積極的に行っているようです。
三生キャピタル三井生命グループのベンチャーキャピタルです。
100社以上の株式上場の実績があり、日本生命保険と三井生命保険の経営統合により、広いネットワークを持っていることも特徴です。
東京海上キャピタル東京海上HDのグループのベンチャーキャピタルです。
大企業の企業再編にかかわるMBOや、オーナー企業の事業承継にかかわるバイアウト、企業再生にかかわるバイアウトなどの投資を行っているのが特徴です。投資対象は国内企業、安定したCFが見込まれる企業のバイアウト、企業価値は50~500億円などを目標に掲げているようです。
三井住友海上キャピタル三井住友海上のベンチャーキャピタルです。
シードからレイターステージまで幅広いですが、シード・アーリーステージでの出資額が多いのが特徴です。

独立系ベンチャーキャピタル

独立系ベンチャーキャピタルは、上記のようなどこかの企業グループや組織に属しているのではなく、独立資本のベンチャーキャピタルになります。大きな特徴としては、投資だけでなくハンズオンによる経営支援に力を入れている場合が多いのと、投資先との事業シナジーは特にないので純投資であることがあげられます。

日本ベンチャーキャピタル ( NVCC )大学や研究機関などの各専門分野の専門家と連携した投資を行うのが特徴です。
ウシオ電気の会長や富士フイルムホールディングスの会長など取締役で多数の著名経営者が多いのが特徴です。
モバイル・インターネットキャピタル(MIC)NTTドコモ、インターネット総合研究所、みずほ証券が出資をしており、IT企業への投資が多いのが特徴です。
フューチャーベンチャーキャピタルJASDAQに上場している京都のベンチャーキャピタルです。
アーリーステージ企業へのハンズオン投資で「開業率を高める創業ファンド」、「廃業率を下げる事業承継ファンド」、「地域に事業を創造するCSVファンド」の事業モデルを展開しているのが特徴です。
イノベーション・エンジン材料、エレクトロニクス、IT、バイオの業界を中心に投資を行っているベンチャーキャピタルです。
主にリードインベスターとして投資を行い、ハンズオンとして社外取締役を派遣を通じて、営業支援、企業提携、経営陣採用など、成長加速支援を推進することを特徴にしています。
日本アジア投資 ( JAIC )経済同友会を母体として設立されたベンチャーキャピタルです。
日本のみならずアジア圏に投資を行っており、中華のエリア投資は現地企業と共同出資で設立したファンドも運営しています。

事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)

CVCはコーポレート・ベンチャーキャピタルの略称であり、事業会社系のベンチャーキャピタルになります。
主にはその事業会社との事業連携、事業シナジーが期待できそうなベンチャーに対して投資を行うのが特徴です。その事業会社が持つ技術連携やネットワークを活用できる可能性もあります。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ大手商社の伊藤忠のCVCです。伊藤忠グループの幅広いネットワークと、経営ノウハウを活かした支援を行っているのが特徴です。国内だけでなく、米国、イスラエル、アジア地域も対象にしています。
サイバーエージェント・ベンチャーズサイバーエージェントのCVCです。ポテンシャルの高いインターネット関連ビジネスで、マネジメント・リーダーシップに秀でた起業家が率いる、グローバル展開を共に志せるベンチャー企業への投資を行います。
YJキャピタルヤフー株式会社のCVCです。
成長支援プログラムCode Republicを運営しており、シードからアーリーステージへの企業に対して支援しているのが特徴です。主にはIT企業への投資が中心でヤフーのブランド力などを活用した支援を行っています。

とにかくベンチャーキャピタルは、多種多様で支援内容も違いますので、ベンチャー企業の特性に合わせて、選ぶのが良いと思います。
何より最後はその担当者に依存すると思いますので、出資だけでなく成長支援を支えてくれそうなところを選ぶのが良いでしょう。

次は、ベンチャーキャピタルのハンズオンによる支援内容について、まとめたいと思います。

投稿者プロフィール

nalab
nalab
管理人:NaLa
元エンジニア
ベンチャーキャピタリスト
うどん県出身/関西在住